1. Clashとは何か:通信を中継し、ルールで経路を選ぶソフトウェア

Clashは、端末から出る通信を受け取り、設定に応じて直接接続するか、プロキシサーバーを経由するかを決めるためのソフトウェアです。Webブラウザーなどの通信をローカルで受け付け、ルールに照らして送信先を選びます。Clashという名前は単一のアプリだけを指すものではなく、コア、操作用クライアント、設定ファイルやサブスクリプションをまとめて指す言葉として使われることがあります。

初めて利用するときは、まず「Clashをインストールすれば、すぐに使えるプロキシサーバーが付いてくる」という誤解を避けてください。Clashは通信を処理するクライアント側のソフトウェアであり、ノードや利用権を自動で提供するサービスではありません。経路を選ぶソフト、経路の出口となるサーバー、それらの情報を配布する設定元は、それぞれ別のものです。

  • コア:設定を読み込み、接続を受け付け、ルールとプロキシ経路を処理します。Clash系のクライアントでは、mihomoなどのコアを使う構成があります。
  • クライアント:設定の追加、コアの起動、システムプロキシの切り替えなどを画面から操作するアプリです。Clash Verge Revなどがこの役割を担います。
  • 設定:ノード、プロキシグループ、ルール、DNSなど、コアが通信を処理するための情報です。YAML形式のファイルで提供されることがあります。

クライアントの画面に「Clash」と表示されていても、動作しているコアや対応プロトコルが同じとは限りません。設定を読み込めない場合は、画面の名前だけで判断せず、クライアント情報や起動ログに表示されるコア名とバージョンを確認します。

2. プロキシ、ノード、サブスクリプションの関係

プロキシは、端末とアクセス先の間に入って通信を中継する仕組みです。Clashでは、プロキシサーバーへの接続情報を「ノード」と呼ぶことがよくあります。ノードには、サーバーのアドレスやポート、プロトコル、認証情報などが含まれます。通信がノードまで届いても、サーバーの混雑、接続先の制限、ネットワーク品質などによって、目的のWebサイトが利用できるとは限りません。

サブスクリプションは、ノードや設定を取得するためのURL、またはその配布サービスを指します。契約サービスが複数のノードを提供し、利用者はその情報をClash対応クライアントに読み込ませる、という関係です。サブスクリプションURLは単なる公開ページとは限りません。URLを知っている人が設定を取得できる場合があり、認証情報のように扱う必要があります。

  • ノード:通信が実際に通過するサーバーと、その接続設定です。
  • プロキシグループ:複数のノードをまとめ、手動選択、遅延テストによる選択、フォールバックなどを行う設定です。テスト結果だけで、あらゆる通信の安定性が保証されるわけではありません。
  • ルール:ドメインやIPアドレスなどの条件に応じ、接続をどのグループへ送るか決めます。ルールモードでも、通信がClashに届かなければルールは適用されません。
  • サブスクリプション:ノード一覧や設定を更新するための提供元です。契約条件、更新方法、対応コアは提供元によって異なります。

「VPN」と「プロキシ」も同じ意味ではありません。Clashは一般に、設定したアプリの通信をプロキシへ送るクライアントとして使われます。システムプロキシだけでは、それを利用しないアプリの通信は取り込まれないことがあります。TUNモードはより広い範囲の通信を取り込む方法ですが、OSのネットワーク設定や管理者権限が関係するため、最初から必須の機能ではありません。

3. クライアントと入手先を安全に選ぶ

使うクライアントは、OS、配布元、更新状況、搭載コア、必要な機能を確認して選びます。たとえば、WindowsやmacOSではClash Verge RevのようなGUIクライアントが操作しやすい一方、AndroidやmacOSには別のクライアントが使われることもあります。名称が似ているアプリでも、開発元やコア、設定の互換性は異なります。使っているOSに対応することだけでなく、利用予定の設定に必要なプロトコルをコアが扱えるかも確かめてください。

入手先は、公式サイトや開発元が案内する配布ページを起点にします。検索結果の広告、動画の説明欄、まとめサイトなどにあるダウンロードボタンは、正規ファイルへ移動するとは限りません。提供元の名前、アプリ名、OS、CPUアーキテクチャ、ファイル形式を照合し、不要なインストーラーや「高速化ツール」を追加で入れないようにしてください。署名やハッシュ値が提供されている場合は、配布元の説明に従って確認します。

サブスクリプション提供元についても、料金だけで決めず、利用規約、対応アプリ、サポート窓口、更新・解約方法を確認します。利用地域の法令や職場・学校のネットワーク規則に従うことも重要です。無料の設定ファイルを見つけても、配布者や内容が確認できない場合は、安易に読み込まないでください。設定には外部リソースの取得先やルールが含まれることがあり、接続先やDNSの扱いに影響する場合があります。

4. 最初の設定:サブスクリプションを読み込み、接続を確認する

以下はGUIクライアントを使う場合の基本的な流れです。メニュー名はクライアントやバージョンで異なります。「Profiles」「設定」「プロファイル」など、設定を管理する画面を探してください。操作に迷ったときは、利用中のクライアントの案内を優先し、別アプリの手順をそのまま当てはめないようにします。

  1. OSとコアを確認する:公式の配布元から対象OS向けのクライアントを入手し、起動後にコア名とバージョンを確認します。必要なプロトコルに対応しないコアでは、設定の読み込みやノード接続に失敗することがあります。
  2. 接続情報を用意する:サブスクリプションを利用する場合は、提供元の管理画面からClash対応のURLを取得します。通常のWebページURLや、他形式向けの設定URLを代わりに入力しないでください。
  3. プロファイルを追加する:クライアントの設定画面でURLを登録し、更新またはインポートを実行します。読み込み後は、プロファイル名、ノード一覧、プロキシグループが表示されるか確認します。
  4. モードとグループを選ぶ:ルールモードを選び、利用するプロキシグループでノードを指定します。グループ名や選択方式は設定ごとに異なるため、見慣れない項目をまとめて変更せず、まず提供元の説明に従います。
  5. システムプロキシを有効にする:ブラウザーなどOSのプロキシ設定に従うアプリを試す場合、クライアントのシステムプロキシ機能を有効にします。すでに別のプロキシアプリが有効なら、ポート競合を避けるため、先にどちらを使うか決めます。
  6. 接続一覧とログを見る:テスト用のWebページを開き、クライアントの接続一覧に通信が表示されるか確認します。適用ルール、選択グループ、ノード、エラーの順に見ると、問題がどの段階にあるか切り分けやすくなります。

システムプロキシでの基本動作を確認するまでは、TUNやDNSの上書きなどを一度に有効にしないのが安全です。最初から複数の設定を変えると、接続が改善したのか、別の問題が起きたのか判断しにくくなります。変更前の設定名や状態を記録し、ひとつずつ切り替えて動作を確認してください。

mixed-port: 7890
mode: rule
log-level: info

このYAMLは設定項目の位置づけを示す抜粋であり、単独で利用できる完全な設定ではありません。7890は例示値で、クライアントが別の待ち受けポートを使う場合があります。また、ノード、プロキシグループ、ルールがないため、これだけではプロキシ接続先を選べません。GUIが設定を生成・更新する方式の場合、生成されたファイルを直接編集すると、更新時に変更が上書きされることもあります。

5. 通信が通る経路と、最初に知っておきたい制限

基本の経路は「アプリが通信を開始する」「クライアントまたはコアが通信を受け取る」「ルールが適用される」「選択されたノードまたは直接接続先へ送る」という流れです。どこか一つが機能しなくても、Webページが開かない状態になります。たとえば、システムプロキシが無効ならブラウザーの通信がコアに届かず、ノードが選ばれていなければプロキシ経路を確立できません。DNSの失敗とノード接続の失敗も、同じ原因とは限りません。

  • ブラウザーだけ接続できる:ブラウザーがシステムプロキシを使い、ほかのアプリは使っていない可能性があります。各アプリのプロキシ対応状況を確認します。
  • 接続一覧に通信が出ない:通信がコアに届いていない可能性があります。システムプロキシの状態、アプリ側のプロキシ設定、TUNを使う必要があるかを確認します。
  • 接続が表示されるが失敗する:適用ルールと選択グループを確認し、次にノードのアドレス、ポート、プロトコル、ネットワーク状態を調べます。
  • 一部のアプリやサイトだけ失敗する:ルール、DNS、IPv6、アプリ独自の通信方式などが関係する場合があります。まず対象の接続だけに絞り、モードや設定を一括変更しないでください。

プロキシ経由になったことは、通信の匿名性や安全性がすべて保証されたことを意味しません。WebサイトのHTTPSはサイトとの通信を暗号化しますが、Clashやサブスクリプションが端末全体をウイルスや情報漏えいから守るわけではありません。信頼できない設定元へ認証情報を入力したり、警告を無視して証明書検証を無効にしたりしないでください。

問題を調べるときは、エラーが起きた時刻、クライアントとコアのバージョン、利用モード、対象アプリ、接続一覧に表示されたルールを記録します。ログを外部に共有する際は、前述の認証情報に加えて個人用ドメインやIPアドレスも見直してください。設定を初期化する前に、現在のプロファイルをバックアップしておくと、原因を特定しやすくなります。

6. 次に覚えること:仕組みを一つずつ確認する

基本操作に慣れたら、ルール分流、DNS、TUNをそれぞれ別の機能として学ぶと理解しやすくなります。ルールは通信の送出先を決め、DNSはドメイン名からIPアドレスを調べ、TUNはOSのより広い範囲から通信を取り込むために使われます。三つは連携しますが、同じ設定ではありません。ルールを書き換えても、通信がコアに届かなければ結果は変わらず、DNSだけを変更してもプロキシ経由になるとは限りません。

初めての運用では、プロファイルを更新する前に利用中の設定を控え、変更後は接続一覧とログで結果を確認する習慣をつけてください。サブスクリプションを更新した後に設定項目やノードが変わることもあります。エラーが出たときは、クライアント、コア、設定元のどこで問題が起きているかを分けて調べると、むやみな再インストールを避けられます。

設定の読み込みやクライアントの使い方を確認したい場合は、チュートリアルを見るから基本手順を確認できます。対応するインストーラーを探す場合は、OSを選んでから配布ファイルを確認してください。